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2018年6月 3日 (日)

朗読(クローゼット)ミュージカル『不徳の伴侶 infelicity』 5/30 19:00〜

@赤坂RED/THEATER
H列 センターブロック

メアリー・ステュアート: 彩乃かなみ
ボスウェル伯ジェームズ・ヘップバーン: 藤岡正明
ダーンリ卿ヘンリー・ステュアート他: 百名ヒロキ
カトリーヌ・ド・メディシス/マリ伯他: 舘形比呂一
ドン・カルロス/リッチオ他: 吉本真悟
​エリザベス1世他: シルビア・グラブ

作・演出: 荻田浩一
作曲: 福井小百合


「不徳」という言葉はだいたい不祥事を起こした(会社の)おじさんとセットになって「不徳の致すところ」というフレーズで馴染みがあり、「不徳」というひとつの単語で使われることはあまり見かけないような気がします。
そもそも「不徳」とはどのような意味なのでしょう。



次に、同じくタイトルに掲げられている「infelicity」という英単語の意味も確認してみると、



直訳というわけではないようですね。

メアリー・ステュアートが不徳な行いをした伴侶を得たことが不幸、それとも、不徳な行いをする者を伴侶とすることが(メアリーが女王として)不適切、もしくは、メアリー自らが若くして最初の夫と死別した後、不徳な行いを重ねて 2人の不適切な相手の伴侶となったことをさすのでしょうか。
たぶん、その全部なのかな。

16世紀のヨーロッパ世界の王室・貴族において、結婚は政治の手段であり、好きな人と結ばれることなどない。自国の利益のために、他国に嫁ぎ、または他国から相手を迎え入れ二国間の結びつきを強固なものにしたり、国内の宗教上のバランスを取ることに終始する。

一緒になった後で心を通わせあった夫婦もいたでしょうが、愛人を持ったり、(当時の環境で1人の子どもが無事に成長する保証がないので)自分の王位を自分の血統で存続させるためには、ヘンリー8世のように宗教を改革してまで離婚と結婚を繰り返した人もいた。

フランスからスコットランドに帰ってきたメアリー・ステュアートの再婚は、メアリーだけのものではなく、スコットランドのものであり、同じくテューダー朝初代イングランド王ヘンリー7世の血統を引くイングランドの問題でもあり、カトリック世界の問題でもあった。

生国とはいえ帰ってきたスコットランドにメアリーの確固とした居場所はない。

王位を獲得するためにメアリーの心細さにつけこむダーンリ卿に打ちのめされた末に復讐に手を染め、お互い最初は結ばれなかったけれど、最後にはメアリーの気持ちを撥ね退けて無理に自分のものにしようとするボスウェルとは安らぎを得られなかった。
メアリーが望んだ王位も幸福も、メアリーの手中にはやってこなかった。

“歴史は勝者が作る”と言いますが、「結婚は愚かでバカらしいもの」と吐き捨てたエリザベス1世の判断が正しく、メアリーは不徳な伴侶を得て、また自らが不徳な伴侶となり、歴史の敗者となっただけだった。
歴史の大局を見極められず、人に利用され、愛に生き抜いたわけでもなく、掴めぬ地位に恋々とし、最後は処刑されてしまう、メアリー。
哀れで悲しい話でした。

朗読劇は、多くの衣装やセットを使わずに地の文を読むだけで時間も場所もひとっ飛びできることが最大の利点。そして、役者同士が直接的に触れ合わないことで生まれる緊張感。そのぶん、全てが凝縮されているように思いました。

メアリー・ステュアートは、欲望まみれなのに強かになりきれず、求めるほど幸せが逃げていく哀れさ、自らが潰れていくことを否定する醜さなど、ヒロインなのに決して愛されるキャラクターではないと思います。
彩乃かなみさんは、ダーンリ卿との恋を歓ぶ可憐な声音からボスウェル伯に姦淫されてしまうときの悲痛な叫びまで、可愛らしさも激しさも感じさせながら、メアリーという人間の姿を見せていました。

藤岡くんのボスウェル伯。後半まで抑えて抑えて抑えた台詞回しが印象的。その代わり歌ではロック調のものや音程の上下が大きいものなど、ダイナミックな曲調のソロ曲があり、ボスウェルの内面は滾っていたのだということがわかりました。
ミュージカルってこうでなくては!!
メアリーを助けたくて、彼女を自分のものにしたくて、その思いが爆発したとき、彼は人間ではなくなった。
手負いの獣は周囲が見えない。ただ自分たちのためだけにしか動けない滑稽とも思える最期を迎えることになった。
2人が死んでから出会う場所は地獄なのでしょうか。

エリザベス1世のシルビアさん!
スーパーかっこいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!
そりゃもう女王ですわ、王位はあなたのものですわ!
何より内政と外交を冷静に判断できる頭脳が、彼女を王たらしめている。
品位はその地位に就こうとして身につくものではなく、その地位に相応しい思考を持ち、行いを正している者に備わるもの。ビアさんのエリザベス1世は気品と知性と少しの残酷さを持ち合わせた素晴らしい女王でした。
絶対メアリーが王位を手に入れるのは無理だとすぐに分かってしまう女王像だったと思います。

カトリーヌ・ド・メディシスは外国人であるメアリーに冷たく、メアリーの異母兄であるマリ伯は自分のことしか考えていない小物なのに、舘様の艶やかな声で語られると魅力的なヴィランに思えてしまう(笑)
陰謀製造機とでもいえばいいのか、あっちこっちでメアリーを陥れようとするしつこさはもはや賞賛するしかないような…。

百名くんは爽やかヤ○ザなダーンリ卿をキラキラと好演。10代の男の子の裏の王位に対する執念。王位を手に入れられるなら、結婚だってしてみせる。だって、結婚は好きな人とするものではないのだから。
歌に関してはほかのキャストが圧倒的な歌唱力の持ち主ばかりなので「が、頑張れ…!」と思ってしまうこともありましたが、動きが制限される朗読劇の中でゲスの極み夫っぷりを台詞で浮き立たせていたと思います。

お目当てだったのが、吉本真悟くん!
ダンサーなのに朗読劇?え、朗読劇なのに踊るの?と興味津々でした。
ダンス公演で何度も見ていて、そのコメディセンスには絶大な信頼があるのですが、この作品でも血生臭い重いシーンを緩和させるキュートな役割を担当。
リッチオォォォォォォォォォォォォォォォ(泣)
また、登場人物の心象(それぞれが歌っているとき)をダンスで表現する場面は圧巻の一言。
特に藤岡くんの歌で、真悟くん、舘様、百名くんが踊ったときには、あまりにも贅沢過ぎて、このサイズの劇場で見られることが信じられませんでした。

ものすごい熱量で歌い上げる大曲からスキップするような軽めの曲調まで、多くのオリジナル曲で16世紀の不穏な情勢と各キャストの気持ちを表現した福井小百合さんの音楽が素晴らしかった!

演出の荻田さんらしく1人の女性が周囲の情勢に飲み込まれていく物語。
メアリー・ステュアートは悲劇の女王なのか、それとも悪女なのか。いや、「不徳の伴侶」なのだと一つの答えを導いてもらったような気がします。

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