フォト
無料ブログはココログ

« ひかりを聴け オーケストラコンサート ♪コトダマの音楽会 partⅡ♪ 5/17 18:30、5/18 18:30 | トップページ | 朗読(クローゼット)ミュージカル『不徳の伴侶 infelicity』 5/30 19:00〜 »

2018年5月27日 (日)

DAY ZERO プレビュー公演 5/26 15:00〜

@水戸芸術館 ACM劇場
S席 2階A列センター

弁護士 ジョージ・リフキン: 福田悠太(ふぉ〜ゆ〜)
タクシードライバー ジェームス・ディクソン: 上口耕平
小説家 アーロン・フェラー: 内藤大希
パトリシア ほか: 梅田彩佳
モリー・リフキン ほか: 谷口あかり
カウンセラー ほか多数: 西川大貴

Based on the screenplay DAY ZERO by Robert Malkani
上演台本: 高橋知伽江
作曲・音楽監督: 深沢桂子
演出: 吉原光夫
ギター演奏: 中村康彦

設定は召集年齢が35歳まで引き上げられ徴兵制が復活した近未来のアメリカ。
それぞれ別の道に進んだ中学生の同級生で今でも毎週末のように集まる34歳の3人に召集令状が届くことからこの物語は始まります。

DAY ZERO、それは出征する当日。
残されたタイムリミットは21日。
彼らはその期間で今までどうやって生きてきたかを突きつけられ、今の自分と向き合い、どうやって生きていきたいかを考えるようになる。

召集令状を受け取った瞬間、それは耕平くんが出演した『I Love A PIANO』でも描かれました。あれは第2次世界大戦でしたが。
それから、ベトナム戦争の出征前日を描いたミュージカル『ドッグファイト』も頭に浮かんできます。
どちらもアメリカを描いている作品。

単純化できる(してはいけない)話ではないけれど、第2次世界大戦では、連合国側の敵(ドイツ、イタリア、アメリカに宣戦布告した日本)に対する”正義”という大義名分があったのだろうし、ベトナム戦争は、当初はアメリカの圧倒的有利と言われていたこと、また『ジャージー・ボーイズ』でトミーが言うように、自分の境遇から抜け出す手段のひとつにもなっていたのでしょう。

20世紀に多くの戦争・紛争を体験してきた人々は、極力それらを避けるように努力してきたはず。

しかし、2001年9月11日を経た近未来のアメリカ。
召集令状を受け取ったタクシードライバーのジェームスは「自由」のために戦うと言うけれど、それは何のための自由で誰のための自由なのか。
ミサイルのアラートが鳴り、自国の安全が自国を飛び越えた国の間で協議される(だろう)2018年の日本にいる私にはそれが分かりません。これが平和ボケと言うのかもしれません。

彼らは、3人の青年は、自分らしくある自由を奪われたのではないのか。
守るべき大切な生活、初めて心が通じ合えた愛しい人、夢…それらをいきなり打ち切られることが果たして正しいことなのでしょうか。
彼らの21日間、私には何か間違ったもののために無理やり動かされているように見えました。


原案になった映画は11年前に公開されたものだそうですが、このミュージカルは近未来という設定なのに、人物描写やエピソードがなんだか古臭く感じてしまいました。
日本で言うところの”昭和かよ”みたいな(アメリカだけど)

弁護士のジョージについて、嫌悪感を抱いてしまう描写がいくつかあるのです。Metooムーブメントが盛んな今、ジョージが犯した過去の過ちについて触れることは、フィクションとはいえ、とてつもなく気持ち悪い思いがします。
彼の行動は被害者が何も救われない”謝罪オナニー”にしかなっていないのではないかと思うし、それに対してジェームスが返す言葉も被害者に対する視点が欠けていて「それはないだろう」という怒りの感情が湧いてきてしまいます。

そして、ハーバードを出て弁護士をしているという設定なのに、LGBTに対する認識はそんなものなのかという驚きというか落胆というか、違和感があります。

多くのセレブリティ、スポーツ選手、政治家がLGBTの権利を主張しているアメリカという国の法の下で働くジョージが、人のプライバシーや性的志向を踏みにじる行為をするということにおぞましささえ感じます。

極限状態になった人間は何をするのか分からない。それはそうかもしれないけれど、このような思考を持った人間が弁護士をしているということに、この作品の主題とはズレますが、絶望してしまいました。

アメリカの国防総省はオバマ前大統領下の2016年6月30日にトランジェンダー(心と体の性の不一致)の人々の米軍入隊規則を撤廃しました。
しかし、17年7月、新しく就任したトランプ大統領が、彼らの入隊を禁止しようとするツイートを更新し、18年3月には、軍務に就くことを一部の例外を除き禁じる方針を発表しています。

近未来は東京五輪より先に設定されているような台詞がありました。
それならば、あの時代は今のトランプ政権の流れを汲んだ思想に支配されているのでしょうか。
西川くん演じる人物の悲壮な様子に胸が痛みます。

先ほど、未来のはずなのに古く感じてしまうと書きましたが、時代全体が戻ろうとしていることを表しているのでしょうか。


性格も職業も環境も違う3人は、ただの仲良しではなく、2人はジェームスに、ジェームスは2人に、それぞれに”借り””恩”があるという、ジェームスを中心にしたバランスで成り立っている。
過酷な少年時代を過ごしたジェームスを助けてくれた2人のためにヒーローでいたいジェームスの思いは、友情というより自己犠牲で、彼は自分が2人よりも幸せになってはいけないと思っているようなフシがある。
なんというか、救われた命を他人のために使う、ジャン・バルジャンのようにも思えます。

バルジャンはコゼットをマリウスに託し命を終えますが、ジェームスはパトリシアを残して戦地に赴かなければなりません。彼女と過ごすことによって得られた安らぎも希望も気づきも捨てて。

ジェームスが21日間の間に見つけたものは、それまで手に入れられなかったもの。
耕平くんと梅田彩佳ちゃん(梅ちゃん)の繊細なやり取りはとても素敵でした。光と陰のような2人だからこそ惹かれあったのだということが伝わってきたと思います。
それにしても、演出のときの光夫さんってロマンチストだなぁ。

一方、アーロンは、カウンセラーから21日間でやりたいことの「トップ10」を作るといいとアドバイスをされ、今までやりたかったけれど踏み出せなくて出来なかったことをこなしていく。本当にやらなければならないことを避けながら。

ジェームスに言われるまでもなく、彼はやらなければならないことは分かっていたのだと思う。危ない薬に手を染めるほどに。
ジェームスがどんなに願っても手に入れられないもの。それを手放してはならない、自分のせいで手放してほしくない、そんな思いで突き放してしまうけれど、アーロンは絶望感を募らせていく。

内藤大希くん、前半はストーリーテラーというか状況説明のような役割を果たしながら、後半にかけて精神状態が狂っていく役でしたが、上手いなぁと驚嘆してしまいました。
アーロンが一人でいる時間に何を考えていたかという空白をきちんと埋められるお芝居の力が素晴らしい。

“Wたいき”ががっつり絡むカウンセリングソングは、西川くんの役が『Next to Normal』で新納くんが演じた精神科医を彷彿とさせます。あちらはロックで今回はフラメンコでしたが(笑) 西川くん、怪演です。

内藤大希くんと西川くんは子ども時代からの知り合いだけれど、板の上で共演するのは初めてなのだとか。

西川くんは、カウンセラー以外にもジョージの父親や部下、レポーターなど多くの役を兼任します。これは『ドッグファイト』の戸井さん(初演)やひのさん(再演)的な立ち位置ですよね。
後ろを向いてすぐに別の役として喋るなど、休憩なしの100分の中でスイッチをいくつも切り替え、また、ほかの3人に影響を与えるように台詞を投げなければならないという難しい役割に挑戦しています。

特筆すべきなのは、谷口あかりちゃんでした。
ジョージに関わる2人の女性を演じているのですが、彼に人生を救われた女性と彼(だけではないけれど)に人生を狂わされた女性という両極端な役柄を、どちらも的確に舞台上に立ち上らせていました。
また、全体的にメロディが難解というか、耳触りとしてはつかみどころのない曲調を歌詞とともにしっかり伝える力量にも圧倒されました。

最近、役者さんの中からも「ミュージカルは芝居だ」という論調をよく見かけます。
それに異論はないけれど、ミュージカルという”方法”を用いるならば、歌を通して心情を分かりやすく伝えるために、いくつかは劇場を去るときに頭の中に流れるようらキャッチーな曲がほしいところです。カオス感を表現するための不協和音の連続ははっきり言ってキツいものがありました。
また、耕平くんと梅ちゃん、福田くんが揃ってるのに踊らないっていうのがとにかくもったいない。
ダンスで伝えることもミュージカルのひとつの魅力だと思うのですが。

最後に、20年来の親友たちなのにファミリーネームで呼んでいた(ディクソン呼び)ところと、アメリカではサーティワンはサーティワンとは言わないはず(バスキン・ロビンスという正式名称がある)だというのがどうも引っかかってしまって…。
特に人の呼び方は関係性の距離を表すものだから、ファーストネームで呼ぶべきではないでしょうか。
(ビジネスだって、数回やり取りすればメールはファーストネームで送られてくるわけだし)
神は細部に宿って欲しい。

本公演での変化を期待します。



« ひかりを聴け オーケストラコンサート ♪コトダマの音楽会 partⅡ♪ 5/17 18:30、5/18 18:30 | トップページ | 朗読(クローゼット)ミュージカル『不徳の伴侶 infelicity』 5/30 19:00〜 »

上口耕平」カテゴリの記事

舞台」カテゴリの記事

西川大貴」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1914425/73568590

この記事へのトラックバック一覧です: DAY ZERO プレビュー公演 5/26 15:00〜:

« ひかりを聴け オーケストラコンサート ♪コトダマの音楽会 partⅡ♪ 5/17 18:30、5/18 18:30 | トップページ | 朗読(クローゼット)ミュージカル『不徳の伴侶 infelicity』 5/30 19:00〜 »